合格体験記 No.4【S・Yくんの場合】

【合格】早稲田大学 教育学部
【合格】法政大学 文学部

 僕は私大文系型で受験しました。教科は国語、小論文、英語、日本史です。その中でも特に力を入れた教科である日本史について話したいと思います。そこから受験勉強全体に言えるアドバイスをしたいとも考えています。

 まず、高校2年生の秋に本格的に受験勉強を始めました。日本史に関しては、その時点で未習。僕の居た高校では2年時に文系、文理系に分かれるのですが、日本史は文系しか選択出来ませんでした。高校2年生の最初の段階で、国公立か私立のみを受験するのかを決定するのは難しかったので、僕は文理系を選択していました。そのため、日本史の学習が遅れてしまったというわけです。一応、世界史の授業を受けてはいたのですが、カタカナを覚えるのに相当苦労していたのと、大学に行くまでに日本の歴史を学んでおきたいと思っていたので、日本史で受験することにしました。

 さて、大手の予備校の中には、社会系科目は1年間の学習で間に合うと言うところがあります。しかし、こと日本史に関しては、未習の状態でそれは不可能だったと思います。中学生の頃とは異なる膨大な知識量、深い理解が問われるからです。予備校の一般論が当てはまるのは、日本史の予備知識がそれなりにある生徒に対してだということです。

 日本史のことを何も分かっていない僕が勧められたのは、漫画でした。 最初、漫画と聞いたとき、「受験勉強なのに漫画?」という疑問はありました。しかし、所謂漫画とは異なり、『マンガ 日本の歴史』(石ノ森章太郎)や『太平記』(さいとうたかを)は非常に歴史資料に忠実で、教科書をそのままコミカライズしたようなものでした。

 楽しんで読んでいるうちに自然と、歴史の偉人たちの顔と名前が、時代と出来事とが結びついていきました。日本史を漫画で学習する最大のメリットは、膨大な情報量の日本の歴史を、脳内でアニメのように再生出来る点です。例えば、比較的日本史の中でも苦戦すると思われる「荘園制度」。力の弱い開発領主が権力のある領家に頼 り、さらに領家が本家に荘園を寄進するという複雑な支配構造を、漫画では絵で捉えることができます。

 また、藤原道長や源頼朝、足利尊氏や豊臣秀吉などの歴史のヒーローたちが活き活きと描かれていて、これまで字面でしか知らなかった彼らの偉業を生きた「イメージ」として捉え直すことが出来ます。実際、高校3年生の1学期は、学校の授業とCria.の授業以外の空き時間はほとんど漫画を読んでいました。授業の復習に漫画を利用していたときもあります。とにかく歴史が苦手という方は、是非漫画から入ってみることをオススメします。

では、次に実際の入試を意識した話をしたいと思います。僕は日本史の勉強を始めたての頃、「日本史の単語を全部覚えたらどこでも受かるだろう」と思っていました。しかし、日本史の単語総数は優に10000語を超えており、これだけ見ても不可能なことが分かります。さらに、論述は論外としても、問題形式も単純記述や正誤問題、選択問題と多岐に渡るので、ただの単語の暗記だけをしていても意味は無いということです。

そこで、受験生間で差がつくのはどこなのか。僕は論理(思考)力だと思います。それも、早慶のような最難関と呼ばれる大学になると、その差が顕著に表れると感じました。所謂、難関大学(MARCH大)は殆どの問題が知識問題で、「知っていれば解ける、知らなければ解けない」問題が多いのが特徴です。しかし、最難関大学(早慶大)は違います。それが端的に示されていたのが、「冠」の問題です。邪馬台国が当時の中国王朝から賜った品として誤っているものを選べ、というもの。鏡や布、冠など5つの選択肢中から1つを選ぶのですが、これは当時の中国が他国と冊封体制を結んでいて、権力の象徴である品を下賜するのは不自然と考えて答えは「冠」。この「冠」の問題は、受験生が実際の資料を読んでいて知識として持っていることを要求しているのでしょうか。

実際、最難関大学でも1対1対応の知識問題は当然出題されます。しかし、上のような問題を論理的に解くことが出来なければ太刀打ちできません。日本史で受験する方は、最後まで下手な暗記に走らず、思考し続けることを忘れないでください。試験本番、一見、見たことの無いような問いでも諦めず理詰めでいけば正解できたりするものです。

最後に、日本史以外の教科にも言えるアドバイスを。国語と英語に関しては、私大の最高峰を目指すのであれば、旧帝大の論述問題は確実にやってください。僕も東大の国語、東大、阪大、北大の英語をやりました。やはり引用されてくる文章、記述問題は一流のものです。だから、「私大しか受けないから」と遠ざけず、立ち向かってください。

論述は思考の過程を文字に著す作業です。記号問題のような誤魔化しは通用しません。最初は、筆が動かないものです。さらに文章が難しいから、理解すら出来ないこともある。それでも、何度も繰り返し考えて、自分の言わんとすることを表現して、時には先生とディスカッションをしていけば、自ずと成果が出てくるはずです。そして、こうした訓練を積み重ねていけば、恐らく私大の文章ですら平易に思えるはずです。

最後、頼れるのは自分の脳みそだけ。それでも、最高のプランナーでありペースメーカーである先生方は最後まで僕の味方でした。皆さんの健闘を祈ります。

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